東京高等裁判所 昭和57年(ネ)273号 判決
三 一般に、生産者が近代的機械設備を用いて商品を大量生産しこれを販売業者に供給する場合において、その商品の使用目的や大まかな規格のみを定めて製作を受注した場合は、でき上った製品が果して契約の本旨に従ったものであるか否かについて争いを生ずる虞があり、注文者にとっても、製作者にとっても甚だリスクが大きいことが明らかである。それ故この種の契約をするに当っては、<1>注文者においてその能力がある場合には詳細な設計、仕様、工作方法等を定めて、これによって製作を依頼し、<2>注文者にその能力がない場合には、まず製作者において注文者から当該商品の使用目的や大まかな規格等を聞いたうえ、注文者が満足するまで試作を重ねたうえ、注文者が満足した段階で、当該試作品の設計仕様、工作方法に基づく商品製作の注文を受けることとなるのが通常であると考えられる。右<1>の方法によるときは当該契約はおうむね請負契約的性格を有するものであり、<2>の方法によるときは設計仕様等の確定に至る段階は準委任契約(有償のこともあれば、無償のこともあるのはもちろんである。)であり、設計仕様等の確定以後は、両者の関係は請負契約のそれであるというべきであろう。もちろん、当事者が自由な合意に基づいて、単なる使用目的、大まかな規格のみを定め、大量生産商品の製造供給を約することが法律上不可能とまではいえないが、以上の理由により、そのようなことは事実上稀であろうと考えられるのである。
四 右三に述べた事理及び以上で認定した事実関係を総合して考えると、本件アイスパンチの製作に関する契約は、少くとも最初の五万個については請負契約として合意されたものではなくて、準委任契約として成立したものであると解するのが相当であり、控訴人はこれによって被控訴人に対し、商品の使用目的に照らし何らの瑕疵のない物件を製作供給する義務を負担するものではなく、善良なる管理者の注意義務を用い、できる限り右目的に副った物件を試作供給する義務を負うに過ぎないというべきである。
(石川 寺沢 寒竹)